【台高】本沢川・釜ノ公谷

記  吉岡
タイトル 亀ノ子谷とも呼ばれる、本沢川流域中の名渓を遡る
メンバー 吉岡・丸尾・榎
日程 2008年6月14日N〜6月15日(日) 天気 曇りのち雨
場所 台高・本沢川 釜ノ公谷 地形図 大台ケ原
歩行時間 8時間38分 遡行図 有り
コース
タイム
白倉又谷出合の駐車場(5:15)→黒倉又谷吊橋(5:32)→釜ノ公谷吊橋(5:45〜6:10)→二段8mの滝上(7:03)→大岩(7:22〜7:33)→左岸からの枝谷出合・700m地点(7:52)→右岸からの枝谷出合・750m地点(8:08)→二俣・840m地点(8:47)→二段3mの滝・休憩(8:53〜9:12)→10mの滝上(9:47〜10:05)→左岸からの大きい枝谷(10:19)→15mの滝(10:32)→斜瀑15×40mの上流・昼食(10:47〜11:20)→大滝50m直下(11:40)→大滝上・遡行打ち切る(11:56〜12:11)→台高主稜(13:05)→(迷う約40分)→大台辻手前の天然桧巨木(14:30)→登山道に出る(14:38)→大台辻(14:46)→三十三荷(15:57)→釜ノ公谷吊橋(16:10〜15:15)→白倉又谷出合の駐車場着(16:50)
アプローチ マイカー利用で、国道169号の大迫ダムから、入之波温泉方面へと向かい、ダム湖に架かる入之波大橋を渡り左折して、本沢川に沿う林道を上流へ。二の股で直進して黒石谷を見送り、ゲート手前の駐車場へ。杉の湯から23.5km、約25分。
装備 一般沢装備、ザイル9o×40m
メモ 釜ノ公谷からの筏場道は数年前から通行止め。「釜ノ公谷から先は通行止」の標識があり、大台辻に向かうまでの間がかなり傷んでおり、銀嶺水の橋は決壊している。平成16年に釜ノ公谷まで整備されたが、その後放置されていて、復旧の見込みは薄いようだ。

釜ノ公谷は、亀ノ子谷とも呼ばれ、本沢川筋では最奥の谷である。岩壁が発達した中に数々の滝や淵を有し、圧巻二段50mの大滝が締めくくる。技術的にはしぶい登攀や、へつりを必要とする箇所もあり、本沢川流域中最もレベルの高い谷である。
私の釜ノ公谷への初めての接見は随分と昔の事で、そのあと1987年6月に記録を残しているが、それからでも実に21年ぶりの再訪であった。

6月14日(土)晴

柏木から大迫ダムを渡り、入之波を経て白倉谷手前の駐車場には22時30分頃に着き、明日の遡行を祝ってささやかな宴を催す。「…明日は行程が長いから4時起き、5時出発」としてシュラフに潜る。

6月15日 曇りのち雨

明けて15日は目覚ましの助けを借らずに4時過ぎには起きて、出発準備を整え5時過ぎには駐車場を後にした。本沢川の左岸に続く筏場道をたどり歩を進める。黒倉又谷に架かる橋を渡りさらに15分も行くと目的の釜ノ公谷の出合に着く。出合に架かる吊橋の下には一際大きい巨岩が鎮座し8mの滝が深淵に落ちている。吊橋からは沢床へはすんなり下れず右岸を小さく巻いて巨岩の上に出る。装備を着け6時10分に入谷を開始。谷は出合からしばらくの間はゴルジュとなっていて、次に2段5mの滝を右岸から越えると、3m、岩間2条小滝に続いて、6×10m斜瀑が現れ右岸沿いに登れば、正面に2条末広がりになって斜瀑7×13m(写真@)が美しく懸かる。
ここも右岸沿いにこなすと、左岸からルンゼが出合い、谷は左に折れて2条6mの滝が深い釜に落ち、上方にも続いて2段8mの滝が懸かっている。ここは過去の記録によれば「釜を胸まで浸かって対岸へ転じ、草付の壁を登攀する・・・」とあるが、まだこの時期では結構水温は低く、泳ぐのを諦めて少し戻った右岸から草付の壁に取り付いて巻き上がることにしたが、ホールドとなる途中の立ち木に手が届かず、ザックから「手長ザル」の出番となる。
その難場をこなすと割りとホールドにも恵まれてザイルを出す程のこともなく上流の川原へ降り立ち、ホッとしたのも束の間、次に両岸の壁が立った釜に行く手を阻まれる。入谷してここまでは膝上くらいの徒渉でこなしてきたが、年貢の納め時で、Mが腰上まで使って徒渉。続く私は胸近くまで浸かって、次にEが続き難場を突破して、ヤレヤレと思いきや、上流には細長い淵が横たわり行く手を拒んでいる。ここは左岸の壁のバンドをトラバースして越えるが、壁に取り付く所がショルダーとなる。トラバースの中間地点には以前にはなかった残置のハーケンとシュリンゲがあって助かった。この淵を最後にゴルジュも終わり、岩間の小滝を越えると谷筋は明るく開け、左岸から入る枝谷を見送る。谷に一際目立つ巨岩があって右から廻り込んで通過すると、上流は台地上になった中州を造っていた。この台地は'87年に遡行した折に幕営した地点で、夜空を焦がすような豪快な焚き火をして、満天の星空を眺めながらの山談義に遅くまで焚き火を囲んでいた記憶がかすかに思い出された・・・。
ゴーロ帯の中を行くとしばらくして岩の積み重なる中に懸かる小滝があって、右から巻き気味に登って次の岩間3m、二条3mの滝をこなすと、左岸から枝谷が入る。標高700mの地点である。左岸に泊に適した台地を見て進みナメL5mを過ぎると、右岸が大きく崩壊した地点に出る。数年前に崩壊したと思われる新しいガレだ。ガレを過ぎると左手より大きい支流が流入して来て二俣に着く。標高750mの地点である。ここで本谷は右に折れて釜を従えた8mの滝を懸けている。ここは左側に残残ロープが2ケ所にあってそれを有り難く使用させてもらう。上に続くナメL6mと二条斜瀑5mを右岸よりこなすと滝場は一旦終って平流になり、岩屑が散在する中を遡上して行く。しばらくして再び連獏帯に入り、小滝が数個連なる。左岸を巻き気味に登り5mの滝を越えると連瀑帯が終る。上流はナメ状となり、その先で右岸から割りに大きい支流が出合う。本谷である右俣を取り、小滝とナメ滝5×9m(写真A)を左岸よりこなすと、上流にも小さいながらもナメと小滝が走り美しい景観を見せている。この辺りで昔は杣道が左岸から右岸へと転じていたが、今は草薮に隠れて荒廃しているようだ。
右岸にガレを見て岩間二段6×10m滝を左手よりこなし、トユ状の小滝を越え、2m滝、5m滝、2m滝  
と越えると10mの滝が行く手を拒む。ここは左岸を絡んで巻き気味に登るが、落ち口へは岩壁が立っていて降りられず、ケンスイ10mで下る。ラストにEがケンスイで下りかけた折、大きな落石を起こしてヒヤリとさせられるが、下にいた者には大丈夫であった。すぐ上にも小滝とナメ滝が続いていて、途中右岸から枝谷が入る。次ぎに1.5mの小滝、二条8m滝とあって右側を巻き気味に通過すると、左岸に大きい支流を分ける。3m滝に続いて1.5m滝、岩の積み重なる中に懸かる5mの滝、岩間6m滝、3m滝とこなして行く。左岸には圧倒的な高さでーが立ち、落ち口にCSを従えた15mの滝(写真B)の直下に出る。ここは左岸を巻いて岩間に懸かる小滝を越えると、上部がナメとなった斜瀑15×40mが白く懸かる。右岸沿いに登り、少し早いがここで昼食として雨を避けて、岩陰で腰を降ろした。たいした降りでもないが、憂鬱な気分になる。

@二条末広形斜瀑6×10m

A1.5mの小滝と上部はナメ滝5×9m

B落ち口にCSが詰まる15mの滝
ナメ滝二段L20mを過ぎると左岸から大きい枝谷が流入してきて、正面には急峻なルンゼがガレとなって突き上げていた。本谷はここで右に直角に曲がり二段15mの滝を懸ける。
ここは右岸のルンゼに入り巻き気味に落ち口に出ると、ナメ滝二条5mがあって上方にはこの谷最大の50mの大滝(写真C)が岩上に水しぶきを上げる。上段の20mは真直に落下し、下部の帯状のナメ滝につなげている。ここは、滝の中ほどまでフリーで直登して行けるが、スリップでもすれば、停止することが困難であろう。中ほどからは右岸、左岸のどちらかを巻くことになるが、今回は安全を期して左岸の灌木帯に逃げて落ち口に立つ。大滝の頭は見晴らし台となっており、晴れていれば、屏風岳や白鬚岳が指呼されるが、今はあいにくとガスに巻かれている。この大滝を最後に釜ノ公谷も痩せ衰え、後は数個の小滝が出てくるくらいで、ツメは三津河落山に突き上げている。
今回は日帰りのため、三津河落山に登るのをやめて、左に入るルンゼから左の斜面に取り付いて台高主脈へと獣道を拾って、トラバースぎみに登っていくと主稜線には13時過ぎに登り付く。後は、稜線にある境界見出し漂を頼りに大台辻へと下山にかかるが、読図が難しく2回の軌道修正をしながら、大台辻へと出る。稜線には伐採を免れたブナの巨木がガスに浮かび幻想的な感じにさせられる・
大台辻からは筏場道を伝って下山にかかるが、途中、何ケ所も桟道が崩れて悪い箇所もある。特に銀嶺水に懸かる箇所の桟道は完全に崩壊しており、通行も困難であった。その先三十三荷に至るまでにも数箇所崩壊しており、復旧の見込みはなさそうだ。三十三荷からは植林の中に良く踏まれた道が続き山腹を絡んで下ると、釜ノ公谷に架かる吊橋へと下山してくる。後は往路を引き返し、白倉谷出合いの駐車場へは16時50分に帰りつく。朝の5時に歩き出して実に12時間の長帳場であった。

C釜ノ公谷最大の大滝50m