【大峰】白川又川・火吹谷

記  吉岡
タイトル 白川又川の流域中、最も顕著な岩壁を持つ谷
メンバー L 吉岡、丸尾、榎、竹歳 他1名
日程 2008年7月20日〜21日 天気
場所 大峰・白川又川 水晶谷下降〜火吹谷 地形図 釈迦ケ岳、弥山
歩行時間 10時間34分 遡行図 水晶谷  火吹谷
コース
タイム
第1日目 火吹谷出合(16:05)→行合(16:42)→CS5m滝上の河原着(泊)17:15 第2日目 CS5m滝上の河原(6:20)→60m大滝直下(8:15〜8:30)→S字状斜瀑7×15m上流(9:50〜10:18)→12mの滝上流・昼食(12:30〜13:05)→一の谷(13:25)→二俣・二の谷(13:38)→右岸からの涸谷・985m地点(14:00)→一際目立つ大岩(14:30〜14:40)→最後の二俣・1150m地点(15:20〜15:40)→大峰主稜線(16:25〜16:33)→トンネル西口への分岐(16:36)→行者還トンネル西口着(17:20)
アプローチ 天川川合からマイカーで約30分。行者還トンネル西口に15〜16台ほどの駐車スペースがある。
装備 登攀具一式
メモ 今回、火吹谷へのアプローチに水晶谷を下降して、白川又川本流を火吹谷出合へと下降したが、行者還林道から取り付き、火吹谷の出合まで、休憩も入れて8時間45分程要した。火吹谷出合への最短ルートは、弁天の森ピークから唐笠岩への尾根を下降して、火吹谷出合いへと出るのが早く、弁天の森から2時間もあれば下れるであろう。白川又川本流の水は真夏でも冷たく、幾度かの泳ぎを強いられるので、防寒対策が必要。

 白川又川の支流の中でも顕著な岩記号を持つ谷として知られる火吹谷は、中流域に60mの大滝をはじめ、いくつかの連瀑で構成された一大ゴルジュを秘める。弥山から東に延びる主稜線の1601mの弁天の森と一ノ垰との間の南斜面の水を集め二本の谷に分かち合う。
 この谷の遡行は1968年8月に当時、大阪わらじの会の代表であった中庄谷と、国頭のパーティによって初遡行されている。私のこの谷への初見参はその後17年を経た1985年の秋に訪れており、今回で2度目の再訪となった。昔は白川又川林道終点からフジノトコに下り本流を遡行して入谷するのが一般的なアプローチであったが、現在は茗荷(朋芽)谷より奥は通行止めとなっており、行者還トンネル西口から取り付き、水晶谷を下降するプランとした。

第一日目

水晶谷を下降した後、白川又川を下り、火吹谷出合いには16時着。今夜の幕営予定地である岩小屋までは、前回の記録では1時間とあり、陽が暮れるまでにザックを降ろしたいが、出合いには斜瀑4m(写真@)が行く手を拒んでいる。前回は秋とあって大きく高巻いているが、時間が迫った今回は、釜を泳いで直登。既に本流下降の際、幾度となく泳ぎを強いられ身体はすっかり冷えきっていたが、時間短縮のため泳ぐしか手がない。出合から両岸の岩壁が立ったゴルジュは、次に2段3mの滝を懸けるが、これもシャワーを浴びて突破。その後さらに2mの滝が二つあって、両岸の岩壁が触れあわんばかりに狭まった行合の前面に出る。中には小滝を懸けるが釜も土砂で埋まっており、腰までの徒渉で通過して行ける。次に左から18mの滝が懸かる。ここは右岸を巻き、滝の落ち口へとケンスイで下った。続いて5mの滝が現れ、左岸を巻いて通過すると、左岸から滝を懸けて細いルンゼが出合い、CS滝5mを左から越えてわずか行くと左岸に見覚えのある岩小舎があり、予定の幕営地に17時15分に到着。計画よりも2時間強の遅れであった。 岩屋は侵食作用によって出来たもので、4〜5人位なら充分泊まれる広さがあり、雨の日には有難い存在だ。ただ湿っぽいのが難点で、好天時には手前の台地にテントを張ったほうが快適だろう。また、右岸にも規模は少し小さいが、落ち葉の堆積した岩屋があり、こちらの方は2〜3人位なら入れる広さだ。 
白川又川本流に陽が差し込む
暗くなるまでにと、渓流釣りを始めると、すぐに当たりがあり20〜30分ほどで形の良いアマゴを4匹ゲットした。一般の釣り屋が入らないせいか入れ食いである。釣り上げたアマゴは早速焚き火にかざし塩焼きにして食す。旨い・・・焚き火と、これが沢登りの楽しみの重要な要素だ。今回同行したKさんも満足そうで、夜の10時前まで山談義が盛り上がる。 

白川又川本流 長淵を従えた3mの滝は右岸の棚をへつりで 火吹谷出合に懸かる斜瀑4mは釜を泳いで直登@

第2日目

朝5時には目を覚まし、テント場を6時15分には後にする。いよいよ核心部の大滝との接見が待っている。すぐに出てくる斜瀑5mは左から小さく巻き、右岸からの小さい枝谷を見送ると、谷相は一変して荒々しくなり、前衛に8mの斜瀑(写真A)を懸ける。ここはシャワーを浴びての直登を選ぶが、雨具を着用しても朝一番のもろにシャワーを浴びての登攀は堪える。この滝の登攀と全員が突破するのに1時間を費やす。
次にナメ滝5mと3m滝を越えると眼前に18mの滝が美しく懸かり、上流にはさらに7mの滝があって、左岸から巻き上がり、大滝の前面に降り立つ。見上げる大滝は60m(写真B)の落差を誇り、頭上から追い被さるように荒々しく峭立する絶壁から瀑水を落下させる様は実に壮観だ。これが地 図に記載のあるゴルジュ帯で、上流にも幾つかの連瀑を秘める。さてここの突破だが、左岸のガリーに入り高巻きにかかる。岩場の弱点を縫って続く獣道を拾ってバンド帯をトラバースし、左岸に入る支谷に懸かる2段目の滝の頭にケンスイで下り、上段の滝を登って滝の落ち口で横切り細いバンド状をトラバース。
足下には8mの滝が長淵を従えて懸かり、泳ぎを嫌ってそのままトラバースしてケンスイ20mで下り谷筋に降りた。次にナメ滝3mさらにS字状の斜瀑7×15mと続くが、ここは右手をトラバース気味に登って滝の頭に出る。左岸にはローソク岩が立っている。
上流は廊下で、谷は左に折れてCS7mの滝が懸かる。ここは滝の左手を空身で直登するが、岩肌がヌメっていて嫌らしくハーケンを2枚打って突破した。次ぎは右からの12mの滝、ここは直登するすべもなく右岸のガリーから巻き、CSで詰まったところから右にトラバースしてケンスイ18mで谷床に降り立つ。この滝を最後に難場は終わり上流はきれいなナメ床がしばらく続き、右から一の谷、少し離れて二の谷を迎える。

斜瀑8mはシャワーを浴びて直登A

核心部の60m大滝に圧倒されるB

二の谷は地図の二俣の地点で、水量比は3:2くらいで左俣の方が多く、ここでは左俣を取ってツメ上がることにした。左俣に入り変化のないまま10分ほども行くとCS滝4mがあり、それを越えると上流は早々と伏流となるが、少し行くと再び小さい流れが現れる。次に右岸から大きい涸谷を見て進むと4mの滝が懸かるがシャワーを浴びて直登出来る。続く3mの滝を右から越え、右岸からの涸谷を過ぎると二条7mの滝、6m、5mと三連瀑があって、ここは左から右を登って越える。その上で一際目立つ巨岩が鎮座している。伏流となった中を遡上を続けると右岸に大きい涸谷が入り、右の本谷には涸滝6mがある。左から小さく巻いて通過すると、二俣となる。地図の標高1150m地点で、谷はすっかり源流の様相となり、右の谷をしばらくツメ上がった地点から左手の斜面に取り付きジグザグに登行して行くが、そろそろ疲れも出てきてピッチが上がらない。周囲はトチ、ミズナラ、ヒメシャラ、カエデ等の自然林が美しい。最後の二俣からは約50分の登りで奥駈道に飛び出し、ザックを投げ出す。そこから稜線を左に数分もたどれば、トンネル西口へ下る道の分岐に出る。分岐からは30分も下れば、行者還トンネル西口へと下ってくる。