【南紀】高田川・内鹿野谷

記 吉岡
タイトル 名のある大滝を見て、磨きぬかれたナメ床を遡る気分はこの上ない愉しさを味合わせてくれる
メンバー L吉岡、榎、竹歳、宇川、伊地知、奥
日程 2009年5月15日N〜16日(土) 天気  
場所 南紀・高田川・内鹿野谷 地形図 新宮、大里
歩行時間 5時間57分 遡行図 有り
コース
タイム
水車小屋(7:30)→郷尽谷出合(7:57)→出合の滝(8:23〜8:30)→15mの滝(8:40)→
一ツ落の滝(9:24)→右岸からの枝谷出合手前(10:07〜10:17)→
二俣・CO520m地点(10:36)→10m斜瀑の上流(11:10〜11:25)→
尾根に出る・独漂855m北肩の鞍部(11:47〜11:51)→(道を間違い30分のロスタイム)→
白見山(12:55〜13:30)→十字路のコル(13:50)→往路の丸木橋(14:21)→
木馬道を辿って→植林小屋(14:40〜14:48)→林道に出る(15:16)→口高田(15:34)
アプローチ  
装備 初心者がいる場合はザイル30m一本は持参すること。
メモ 水車小屋から出合の滝までは、自然観察路として整備されている。
白見山からの下山路は、踏み後程度で迷いやすい箇所もあるので注意したい。

内鹿(うちが)野(の)谷は、白(しら)見(み)山の南東面の水を集め、高田で西ノ谷に注ぐ支流である。この谷の源頭は900m程度とはいえ、核心部には一ツ落の滝、栂ノ戸の滝といった名のある大滝を有し、他にも「ズリ岩」「ヨキトリ淵」「出合の滝」といった名が付けられていて、昔から人との関わりの深い谷で、随所に炭焼き窯跡や、木材を搬出した旧木馬道などが残っている。
この谷の魅力は核心部の大滝と、石英斑岩の磨き抜かれたナメ床が源流まで続くことで、遡る者を有頂天にさせてくれる。「近畿の山・続 日帰り沢登り」(ナカニシヤ出版)にも紹介していることから訪れる者も多く、出合滝までは遊歩道も整備されており、初心者から中級者まで愉しめる。
3月にも例会予定を組んだが、この日は生憎と雨で中止した経緯があり、今回は2度目の計画。天気予報では雨・曇りを告げており、前夜は雨にたたられ、翌朝になっても小雨が残っていたが予定通り出発。
内鹿野谷橋から谷沿いの遊歩道を辿る。対岸には出合から内鹿野の一枚岩が屹立しているが、ガスの中に閉ざされている。「フケの淵」を見送ると、遊歩道は木橋を架けて右岸に転じ、三森ーにさしかかると「ズリ岩」の道標がある。岩壁の一部がズリ落ちたのでこの名が付いたそうだ。
続いて岩が積み重なる中に3nの滝を懸ける「ヨキトリ淵」がある。杣人が淵にヨキ(手斧)を落として取られたことからこの名がついたとの説明がある。

遊歩道は郷尽谷を横切り、再び左岸に転じて出合の滝まで続いている。道は所々苔むした石畳もあって旧の山道の歴史が偲ばれる。
小屋跡を見送ると「俵淵」の横を通過する。その先で水車小屋から来る巻き路(山道)が合流し、分岐には道標が立っている。出合の滝はここから7〜8分行った処で、「ナマズ口(ぐち)の滝」(ナメ滝4m)に続いて「出合の滝」20mが優美な姿で懸かっている。
踏跡は滝の左岸に続いているが、道が整備されているのはここまでで、一般のハイカーはここで引き返す事になる。
出合の滝は左岸の踏み跡を拾って高巻いて落ち口に至るが、滑りやすく残置ロープがあると安心だ。

ナマズ口の滝と上方は出合の滝20m

出合の滝20mが優美な姿で懸かる
左から水越谷が出合い、上流は一枚岩のナメ床となっていて、トユ状ナメL15mが心地よい旋律を奏でる。ナメ床の先には15mの滝が岩肌を滑るように落ちていてこの滝も美しい。
ここは左岸から巻き登るが残置ロープがセットされており、ザイルを出すこともなくクリアーする。
次に細長い深い淵(カンス淵?)を見てナメ床を進むとトユ状に水流が走るナメL40mがあって流水の中を飛沫を上げて遡っていける。
ナメ床が尽きると谷は左に曲がり、ゴーロ帯を抜けると10mの滝と6mの滝とが連続して懸かる。

一枚岩のナメ床に走る
トユ状ナメL15mを行く

ナメ床を行くと15mの滝が
美しく懸かる
ここは右のガレたルンゼから取り付き高巻いて行くが、上段の6mの滝は丸く深い釜を従え特異感じを見せていた。すぐ先には「一ツ落の滝」が白布をかけたように落下している。落差約40m、ここは左岸の滝よりのブッシュを頼りに直上して行けるが、高度感もあり、ザイルが必要で、今回は人数が多いこともあり、安全を期してさらに上部まで巻き登ったところから立ち木のあるバンドを伝って、リッジに出る。
続いて栂ノ戸滝40mが樹林越しに眺められる。滝の全容を眺めるには滝の直下へ降りなければならず、ザイルが必要でここも面倒とばかりにパスをして、そのままリッジから巻いて栂ノ戸滝の落ち口に下り立った。
落ち口から続く5m滝と上部がナメった6mの滝を越えると核心部は終わり、上流は平凡な流れとなる。一息ついて10分程も行くと左から枝谷が流入し、本流左岸の上部に石垣の積まれた旧木馬道が眺められ、すぐ先の導水路(水取入れ口)まで続いている。
右岸の台地には小屋跡の名残を留める石積みがあり、杉の植林が盛んだった頃に寝泊りに使われていた植林小屋跡であろう。その先には木橋があって右岸は杉植林帯に変わる。植林帯に沿って右岸には踏み跡が通じており、しばらくそれを辿るとCO520m付近で二俣になるが、今ひとつはっきりしない。右俣が本谷であるが出合い付近はゴーロ状になっており、水の流れも見られず、知らぬ間に左俣に入ってしまう。

一ツ落の滝40mが末広がりに懸かる
右俣本谷は長々と続くナメのあと、白見山直下へと突き上げるが、今回はそのまま左俣をツメ上がることにして、先行する榎さん達に追従する。小さなナメを過ぎると、ナメが100mにわたって続き、その先に傾斜の強めた斜10mが現れる。ここは好みのルートが取れるがスリップには注意したい。
ゴーロを見て進むと、谷床は一枚岩の岩盤に変わり、ナメ状の滝が連続する。先ず最初はL20mのナメ、次ぎはナメ滝L15m、傾斜のある斜L10mと、全長にして300mばかり続くが、ホールドが細かいので、自信の無い者は左右に逃げて遡上を続ける。
CO690m辺りになるとナメは傾斜も緩み、石畳を敷き詰めたようなナメ床となり、ホールドにも恵まれ愉しく直登して行ける。この滝場で一気に高度をかせぎ、二俣に着くと水も涸れる。最後は倒木の多い植林帯の中を登りつめて尾根に出る。独漂855mの北方の鞍部で、尾根には踏み跡が通じている。
尾根に出てから靴に履き替えするものも居て、「先に白見山に行ってるから・・・」と言って先行したのはよいが、地図と磁石で確認せずに歩き始めたら、反対方向の南へ進んでしまい、30分ほどのロスタイム。元の登り詰めた地点に戻り、北に向かって幾つかのコブを越えていくと、見覚えのある白見山の三角点に着いた。山頂で記念写真の後、下山は東に延びる笹地尾根を下り、十字路のコルで右の内鹿野谷側に下って、二俣を経て旧木馬道を辿り口高田の里へと下ってくる。
口高田に出てから高田までは長い車道歩き。30分強も歩いたところで、道を尋ねに作業の人に声をかけたところ、歩いて高田に戻る我々を見て、不憫に思ったのか、仕事を止めて車を出してくれた。高田の人々の親切に感謝しながら、さらに1時間強はかかる道程を、軽トラックの荷台に揺られて高田の水車小屋まで送って貰った。後は、高田温泉の湯に浸かり山の疲れを癒して帰途に着いた。