【台高】宮川・大熊谷 東股谷

記  吉岡
タイトル シャワーを浴びての滝の直登が魅力の名渓
メンバー L上仲、吉岡、榎、八嶋、宇川、奥、伊地知、木下、他1名
日程 2009年5月23日N〜24日(日) 天気 曇り小降り 後 晴れ 
場所 台高・宮川・大熊谷 東俣谷遡行 地形図 宮川貯水池、七日市
歩行時間 3時間13分 遡行図 有り
コース
タイム
大熊谷 東俣谷出合(8:20)→二段18mの滝(8:44)→不動滝直下(8:56〜9:03)
→夢幻の滝直下(9:40〜10:00)→二俣(10:23)→7mの滝(10:56)
→奥の二俣(11:35〜12:10)→林道に出る(12:28)→駐車地点(12:35)
アプローチ  
装備 装備は一般沢装備、初心者がいる場合はザイルを持参したい。
メモ 大滝以外は直登出来る滝も多いが、パーティの力量に合わせて登ること。
遡行終了地点付近に車を回送していない場合は、下山に約3時間を要する。

大熊谷 東俣谷(第二支流)は迷岳1309.1mから東に延びる尾根から流れ出る谷で、地図に記載のある不動滝60mと、誰が名付けたのか夢幻の滝50mの傑出した滝を懸ける。中流域には大滝の他にも5mから10m前後の滝がたくさんあって、直登出来る滝も多く、沢登りの楽しさ、爽快さという点では申し分のない名渓である。
この谷の遡行は1967年3月20日〜21日に大阪わらじの会の中庄谷、池上、福寿、国頭のパーティの記録が『台高山脈の谷(上)』に掲載されている。当時の記録によると左岸には山道が通じていて源流域は伐採された直後で、イバラがひどく手が付けられないとある。その後42年が経過し、植生も落ち着いてきたが、近年になって再び開発の手が伸び、林道が施設され源流域で中段された状態となっている。それでも中流域の良いところは温存されていて、現在でも遡行価値の高い谷であると言えよう。
前夜は大熊谷近くの合流地点まで車を飛ばし、堺市からの車と合流。今回は入会希望者も入れて9人の大所帯と相成り、酒宴は多いに盛り上がりをみせ2時間近く宴会が続く。明けて24日はヤチヤマ林道の東俣谷まで車を1台下山のために回送しておく。大熊谷 東俣谷出合いから12km、ヤチヤマ林道入り口からでも7kmもあり、歩いて下山となれば3時間近く要するところであるが、大いに助かった。

出合から眺める東俣谷は、両岸に100〜150mのーが立っていて凄い眺めで威圧感を覚えるが、谷中は薄暗い廊下状の中に小滝を懸けるのみでしばらくはたいしたことはない。左岸から10mの滝を懸けた枝谷が入ると、小滝の後、くの字形2段12mの滝が現れる。ここは左から巻き登ると続いて2段18mの滝が美しく懸かる。ここも左手から巻き登るが、近年は入渓者が多いのか踏み跡が通じている。ナメ状の小滝に続いて斜瀑L10mを直登で越えると正面、巨岩帯の奥に側壁の発達した大滝が眺められて歓声を上げる。地図に記載のある不動滝(写真@)で、落差は目測で2段60mはあるだろう。今回、私以外にこの滝との接見は全員初めてであり、その素晴しい眺めを記念写真に余念がない者も居る。さてここの突破であるが、左岸に入るルンゼから取り付いて大きく巻き上がるが、途中からは旧山道の名残もあり、電気コードなども残置されており、ルート判断も無く容易く巻き上がることが出来る。
上手く滝の落ち口へと導かれて谷に下ると、斜瀑5×10mが岩肌を滑るように落ちていた。続くスラブ滝3mにはコードがあってそれを手がかりに容易くこなす。
次にナメ滝4m、斜瀑4×7mと越えて行くと、5mの滝の正面に「夢幻の滝」(写真A)と名付けられた大滝が美しい姿で水流を落としている。この滝も大きく落差50mはあるだろう。
「夢幻の滝」の名は最近のインターネットの記録には、その名の記載が見られ、谷の入り口にも標識が付けられているが、少なくとも2002年度には無かった滝名で、それまでは単に「大滝」と呼んでいた。滝名を含め地名に関しては、歴史的な背景や、文化、伝説、地形などから付けられるものであり安易に名付けるものではない。
さて、夢幻滝の突破は、右岸から取り付き、木の根を手がかりに高巻いて落ち口に至るが、踏み跡があって容易く巻き上がることが出来、せっかく持参したザイルの出番が無い。落ち口の上には5mの滝があって、上流には3mとナメ滝L7mとが続き、両岸の岩壁が立った中に懸かる15mの滝に出くわす。家ほどもある巨岩が谷を埋め、左の奥まったところにも10mくらいの滝を懸けていた。ここは右の15m(写真B)の滝身に取り付き、直登して越えていくがぬめっているので注意したい。
落ち口の先で岩間に懸かる小滝をやり過ごすと、まもなく小屋跡が左岸の台地にあって二俣に着く。水量比は4対1で左が本流である。地図のCO540m地点で、入渓を開始してから休憩も含めて約2時間の道程であった。

谷の入り口の標識

@不動滝二段60m

A夢幻の滝50mの雄姿

B15mの滝は右側から直登

二俣で一息ついて左の本流を取って遡上を続けると、端整な形の20m(写真C)の滝が現れる。ここは右岸から高巻いて滝上に出ると、石積みの残る小屋跡がある。1967年代には植林小屋として使用されていたもので、それ以前にも炭焼きの人たちが入っていた名残が見られる。
谷は上流域に入るが、滝場はさらに続き、斜瀑5m、6m、3m、4m、2条3mと出てくるが、殆どの滝が直登出来、榎さんと伊地知君がトップを競うようにしてこなして行く。(写真D)

C容姿鍛錬な20mの滝

D直登する2人

次ぎに7mの滝が懸かるが、ここは直登出来ずに右岸を巻いて落ち口に立つ。そして次に2mの滝に続く6mの滝に出会うが、ここが今回一番楽しかった滝場で、それぞれが頭から全身にシャワーを浴びて直登した箇所である。次ぎの6mの幅の広い滝は左岸を巻き、ナメ状の小滝、10mの滝とこなし、数個の小滝に続く6mの滝を越えると奥の二俣に着く。地図のCO740m地点である。出合付近は幕営には適した台地が見られる。
谷はこの先、流れも細くなり原流域へと入るが、ここでは右の谷を取って数個の小滝をやり過ごしてコンタをかせいで行くと水の流れも途絶えガレ谷になり、上方には林道が横切っているのが眺められて、数分でヤチ山林道の支線に登り着いた。ここからは、のんびりと林度を辿って回送してある駐車地点には12時35分に着きザックを降ろした。
車の回送が無ければ延々3時間近くの林道歩きを強いられるが、楽々と車に揺られて、入谷地点の東俣谷出合に戻って、宮川温泉の湯にどっぷりと浸かって帰途に着いた。

夢幻の滝50mにて記念のスナップ